本の虫の種々雑多

本に関係あることないこと書いていきます。

砂漠

前回の投稿で、あれほど威勢よく言い放っていたにもかかわらず、ここまで時間が空いてしまいました。

やはりそう簡単に人は変われないようです。申し訳ありません。

 

と、卑屈になるのはここまでにして、今日の本題に入っていこうと思います。

このブログで一番最初に紹介する小説は、これ!!!

 

砂漠 (新潮文庫)

砂漠 (新潮文庫)

 

 読んだことがある方も多いんじゃないでしょうか?

伊坂幸太郎さんの名作、「砂漠」です。

内容を簡単にまとめると、大学生5人の男女がいろいろな出来事や事件を巻き起こす青春小説。

こう書いてしまうと、どこにでもある物語だと勘違いしてしまいそうですが、そこはさすが伊坂さん。

まず、普通の大学生活においては起こらない(私の大学生活が地味すぎただけかもしれませんが)、時にばかばかしく、時に心がグッと締め付けられる出来事が絶え間なく発生します。

思えば、私がこの本を初めて読んだのも、大学一年生の頃でした。確か夏休みが始まる少し前だったと思います。これからの大学生活にはこんなに楽しい出来事が待っているのかもしれないと、妄想した記憶があります。

次に、何よりも登場人物がみんな魅力的。

冷静な物語の語り手、北村。

ぎゃははと笑う、やませみのような髪型の鳥井。

変人、でも実は一番かっこいい西嶋。

クールビューティー、東堂。

そして、私がこの小説の中で一番好きな人物が、シャイだけど縁側にいる猫のような顔で笑う、南。

彼女は、鳥井の中学校時代の同級生なのですが、なんと超能力の持ち主なのです。

おとなしいけど、笑顔が素敵で超能力者。とても魅力的な人物だと思いませんか?

ここまで読んできて、お気付きかもしれませんが、彼らの名前には東・南・西・北(鳥井は除く)の漢字が使われています。

この漢字が意味するのはそう、麻雀ですね。

南は、麻雀の猛者でもあるのです。実は、私もたしなむ程度に麻雀をやっているのですが、なかなか自分の欲しい牌を持ってこられません。その点、南は欲しいと思った牌をツモり、危ないと感じた牌を捨てても振り込まないという、まさに麻雀の神様に愛されたような力を持っています。小説の登場人物と言ってしまえばそれまでですが、ぜひ弟子入りをして麻雀について教わりたいものです。

と、話が脱線してしまいましたね。

このブログの目的は、小説家志望の視点から、その本の良さを紹介することです。

ここからは、この小説の参考にしたい部分を書き出していこうと思います。

  1. 章のタイトルが春夏秋冬になっている。
  2. なんてことは、まるでない。
  3. 名言のセンス
1・章のタイトルが春夏秋冬になっている。
 これは他の小説でもよく見かけるタイトルの付け方ですが、一味違うのが季節が一つ進むごとに、彼らの学年も一つずつ上がっていくところ。初めて読んだときは、春の章から夏の章へ移った時、そのまま学年は同じと思って読んでしまいました。後で気が付いたときにやられたなあと、素直に思いました。このように、章のタイトルもなんとなくつけるのではなくて意味を持たせて、それに一工夫加えて読者を驚かせるようにしたいですね。
 
2・なんてことは、まるでない。
 このセリフは、主人公の北村がよく心の中でつぶやく言葉なのですが、とても印象に残ります。なぜなら、この言葉自体は否定の意味ですが、この言葉で否定したことは後に事実になるからです。例を挙げますと、北山が最初に他の登場人物たちと出会った新入生の飲み会のシーンの最後に「何事にもさめている僕のその大学生活が、もしかすると彼らによって、劇的なものになるのかもしれない。そんな予感とも期待ともつかない気配を、その時の僕は感じていた。なんてことは、まるでない」とあります。その後の北村の大学生活が劇的なものになったかどうかは、言わずもがな。このセリフは物語の要所要所で登場します。そして、この小説のエピローグの最後の文は、「なんてことはまるでない、はずだ」という言葉で締めくくられています。どうして「はずだ」という言葉が付け加えられているのか?それはぜひこの小説を読んで確かめてください。
 
3・名言のセンス
 この小説に限らずですが、伊坂さんの小説には心に響く名言がたくさんあります。特に変わり者の西嶋が多くの名言を言い放っているのですが、例えば「その気になればね、砂漠に雪を降らすことだって、余裕でできるんですよ」や、「そうやって、賢いフリをして、何が楽しいんですか。この国の大半の人間たちはね、馬鹿を見ることを恐れて、何にもしないじゃないですか。馬鹿を見ることを死ぬほど恐れてる、馬鹿ばっかりですよ」などなど。私も漏れなくその馬鹿の一人なのですが、少なくとも行動する馬鹿になろうとこのブログを書いているところです。最後に、北村たちの卒業式で学長が語った名言をもう一つ。「人間にとって最大の贅沢とは、人間関係における贅沢のことである」。このように印象に残る言葉を生み出すところが、伊坂さんの魅力の一つだと思います。私も、読者の心に残る言葉を紡いでいきたいですね。
 
それでは、今日はこのくらいで失礼させていただきます。 

ぜひ、皆さんも一度手に取って、伊坂ワールドを楽しんでみてください。

それと最近、実業之日本社文庫から新装版が発売されたそうです。

私は新潮文庫の表紙が好きなのですが、こちらには伊坂さんのあとがきが新しく追加されているみたいですね。

私も、そのあとがきを読むためだけに、買ってみようかなあ。

 

 

砂漠 (実業之日本社文庫)

砂漠 (実業之日本社文庫)